湯浅政明の新作アニメはラブコメ、「僕の中で最もシンプルなお話」
湯浅政明の特集「アニメーション監督 湯浅政明の世界」として劇場アニメ「夜明け告げるルーのうた」が、本日10月28日に第31回東京国際映画祭にて上映され、合わせて湯浅によるトークショーが開催された。
湯浅は「夜明け告げるルーのうた」について、「アニメーションが好きだという基本的なところを前に出して、初心に帰って作った作品」と紹介。「最初はバンパイアの女の子とその家族、少年の話で舞台は陸上でした」と初期の構想を明かし、「『アダムス・ファミリー』チックなイメージがあって。それを映画としてストーリー性のあるものにしようとしていた」と話す。続けて「もっとみんなが好きになれるようなキャラクターのほうがいいんじゃないか」と脚本の吉田玲子から言われ、「女の子を人魚にしてキャラクターはかわいく、バックボーンは怖くしたんです」と説明した。
司会者にカイとルーの恋愛を描かなかった理由を質問された湯浅は「ファミリーと地域の話にしたかったのでラブストーリーにする考えはなかったです」と回答。「1度ルーを大きくしてみたんですが、生々しくてラブストーリーが起きそうだったので止めて小さい子のままにしました」と制作秘話を明かした。
カイの祖父や、タコ婆との別れのシーンに涙を誘われたと言う司会に対し、湯浅は「そういったキャラクターに割いている時間は少ないので、気に留めないのかなと思っていたのですが、集中して反応されてる方が多く、よく観てくれてるなと思いました」とコメントした。下田翔大演じる主人公のカイが熱唱すると街が動いていく終盤のシーンについて湯浅は、「きれいに歌わずに下手なくらいで、気持ちで歌ってほしいとお願いしました」述懐。オーディション時のことを振り返り「彼の声が中学生の生の声だったので、彼がカイ役がいいとみんながそう感じていました」と語った。
司会者から「ルーがポニョに似ていて、ジブリ愛を感じる」というコメントをもらった湯浅は「はじめは競合がいないと思って人魚にした」と明かし、「ポニョに似てると気付いたのはあとででしたね(笑)」と答え司会者を驚かせた。続けて、「ジブリ愛、宮崎駿愛はあって、カイは最後に自分の好きなものを発言するので、自分も(本作では)自分の好きなアニメーションを前に出しています」と思いを語る。具体的な作品名として「パンダコパンダ」を挙げ、「子供の頃に観て大好きで、(本作の)パパのキャラクターは(「パンダコパンダ」の)パパンダのイメージがあります」と裏話を披露した。
最後に、新作長編映画「きみと、波にのれたら」の詳細を発表。サーフィン好きな大学生の女の子と、消防士の青年の関係を描くオリジナルアニメという本作について、湯浅は「僕の中で最もシンプルなお話で、基本ラブコメです」と説明。司会者が「マインド・ゲーム」など過去作を例に挙げ、本当にストレートなラブストーリーなのか問うと、「伝わりやすい作品になっていると思うので期待してください」とファンへメッセージを贈った。さらに同作は「夜明け告げるルーのうた」と関連があるそうで、湯浅は「続編ではない」と明言したうえで「『ルー』とちょっとつながっているところがあります」と明かした。